「スティーブ・ジョブズはよい経営者か?」と訊かれたら、皆さんはどう答えますか。
イエスですか、ノーですか。
スティーブ・ジョブズと言えばアップル社の創業者であり、元CEO、そしてPCの先駆けであるアップルⅡを世に送り出し、iPod、iPad、iPhoneといった革命的な商品をヒットさせてきたIT界のパイオニアです。憧れる方も多いでしょう。
このような功績を上げてきたジョブズ氏を、悪い経営者ということはできないかと思います。
しかし、もし皆さんがジョブズ氏の直属の部下であったら、きっと皆さんの多くはすぐに音を上げてしまうことと思います。なぜなら、スティーブ・ジョブズは極めて独善的で、無慈悲な面を持っていたからです。ジョブズ氏は優秀な人を求めるあまりに、そうでないと思える人をバカもの呼ばわりして追い出すこともあったのです。
あなただったら、そのようなジョブズ氏のもとで働きたいですか。
私はノーです。なぜなら、私は優秀ではないからです。
では最初の質問に戻りましょう。
「スティーヴ・ジョブズはよい経営者でしょうか?」
この質問には簡単に答えられるものではありません。
また簡単に答えるべきものでもありません。
むしろ、「スティーブ・ジョブズは経営者としてどこがよかったか?」と問うべきでしょう。
オール オア ナッシングではないのです。
私たちの悪い性質は人を容易にジャッジし、人のよし悪しを決めつけてしまうことです。
人は一長一短であり、変容する存在なのです。
ただジョブズ氏をよい経営者と考えるときに、この「よい(good)」とはどういう意味なのか整理する必要があります。何をgoodとするか、またその基準は何か、ということです。
私たちは自分がgoodと思うものを追いかけます。しかし、そのgoodの根拠はあいまいです。
それは成功への憧れであったり、富や名声への欲求であったり、優しさや思いやりに対する暖かな記憶であったり、私たちがこれまで感じてきたものによってgoodは無意識のうちに定義されます。
しかし、その定義が間違っていたら、私たちは幸せにはなれないでしょう。
この「good」については、別の機会にもう少しゆっくりお話ししましょう。