「好き嫌い」について考える

目次

「好き嫌い」についての気づき

皆さんは「好き嫌い」について考えたことがありますか?

多くの人が「好き嫌い」を感じたことはあるのですが、「好き嫌い」について考えたことはあまりないようです。

通常「好き嫌い」とは感じるものであって、考えるものではないようです。

「好き嫌い」とは私たちにとって主観的・感覚的・感情的なものですが、客観的・思考的・論理的なものではないようです。

それでいて、私たちは「好き嫌い」によって大きく影響され、無意識のうちに言動や心身の状態を左右されているのです。ですから、好き嫌いについて意識的に考え、何らかの気づきが得られれば、好き嫌いによる影響をよいものに変えることができるのです。好き嫌いについてメタ認知するということです。メタ認知とは物事を客観的に俯瞰的に考えるということです。

「何か好きなものを考えてみてください」と聞かれたら、皆さんは何を考えつきますか。

私だったら「チョコレート」です。

私はお酒を飲みませんし、タバコも吸いません。しかし、チョコレートは好んで食べます。

なぜでしょうか。 ???

皆さんからしてみれば「そんなこと知りませんよ」ということですが、その通りだと思います。先にも述べたように好き嫌いとは主観的なものですから、本人しか分からないのです。ただ、好き嫌いは感覚的・感情的なもので普段意識していないものなので、なぜ好きなのか、または嫌いなのかは本人ですら分かっていない場合が多いのです。

私の昔のアルバムを開いてみると、3歳頃の私がチョコボールの箱を持って食べている写真があります。「ああ、この頃からチョコレートを食べていたのか」と分かる証拠写真ですね。

推察するに、チョコレートは小さい頃、そんなに食べさせてもらえなかったように思います。それは虫歯になるとかいうような理由からだと思います。ですから自分にとってチョコレートはたまにしか食べられない食べ物だったように思います。それでいて、食べたときの口溶けと甘いチョコレート特有の味は幼いながらに「おいしい」と感じるものだったように思います。このような感じで私はチョコレートが好きになったのだと思います。

試さなければ好きにはならない

ここで考えられることは、もしチョコレートを食べたことがなければ、私はチョコレートを好きになることはなかったということです。

これはとても大切なことですが、私はお酒もタバコも好きではありませんが、実のところお酒を飲んだり、タバコも吸ったりしたことがないのです。めずらしいと思われるかもしれませんが、私は十代の頃にお酒とタバコの害を両親からよく聞かされていたので、成人してもそれらを試したことがなかったのです。

現在、成人の飲酒率は20%ほどで、アルコール依存症者は100万人以上と言われ、成人の喫煙率は16%ほどと報告されています。これらの数は減少傾向にあるものの未だにかなりの数の人が飲酒や喫煙の習慣を続けているとのことです。もうすでに常識ではありますが飲酒喫煙は発がん性の原因であることがIARC(国際がん研究機関)により報告され、癌の原因であることが明らかになっています。一方、成人の中で癌になりたい人は間違いなく0%と思いますので、多くの人は好ましくない結果を知りながら、それらの要因となり得る飲酒・喫煙をやめられない状態にあるということです。

私たちは、よいものと悪いものとを選択するときに、それらを試してから選択するように促されることがあります。また試すことを声高に薦める人もいます。しかし、本当によい結果を得るためには、悪いものを試さないようにするということが大切なのです。

まさに「君子危うきに近寄らず」とか「転ばぬ先の杖」というブレーキ機能がときに必要なのです。

しかし、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」とか「案ずるより産むがやすし」といったアクセル機能を促す声が大きいのも確かです。

試行回避による依存性回避

会社経営の現場では試行錯誤が繰り返されています。これは「行動による学習」や「多くを試してから選択する」という経営の通念によるものだと思います。もちろん行動は物事を深く理解する上で重要であると思いますし、価値あるものを見い出すためには多くを試す必要があると思います。しかし、学習のための行動や試行錯誤を闇雲に進めることはリスクを伴うことをわきまえる必要があります。一度行動して試してしまうと、その有害性を知る以前に、一時的な快感によってそれから抜け出せなくなる依存姓を身に着けてしまう可能性があるからです。そして、それは不可逆的なものにもなり得るのです。ピクルスになった脳は二度とキュウリにはもどらないからです。

会社では未だに命令統制というスタイルで社員を働かせようとしているマネジャーがいますが、これはパワハラなどを生み出す傾向にあります。たとえそうでなくとも社員のモチベーションを下げることは間違いありません。このようにパワーを振るうマネジャーはそのようなスタイルをかつてどこかで試して快感を学んでしまったのだと思います。そのような権力を振るうことは神経伝達物質のテストステロンの分泌を促し、欲求をつくるドーパミンを生じます。これによりパワーを振るうことで快感や期待感を生み出す脳の神経構造を作ってしまったのでしょう。これがパワー依存症の始まりです。世の中の独裁者などはまさにパワー依存症患者であり、その支配下の人々はその被害者です。

「試行錯誤や行動学習の必要性」と「依存症にならないための試行回避」というアクセルとブレーキの機能がマネジメントでは必要であり、ケース・バイ・ケースでそれらを使い分けるべきと思います。

それを実行するためには正しいセオリーを学ぶ必要があるでしょう。

会社経営、夫婦関係、子育て、生徒の学習意欲向上、セルフ・カウンセリング、国家間の紛争解消などあらゆる場面で正しいセオリーが求められます。

そのようなセオリーに興味のある方は「アンダスタンディング・セオリー」を学んでみてください。きっと新たな理解が得られると思います。

では皆さんと皆さんの組織に豊かな実りがありますように。