1.0・【アンダスタンディング・セオリー】/情報化社会における渇き 

目次

*本ブログは最新のモチベーション・セオリーを皆さまにお届けするものです。【アンダスタンディング・セオリー】の前に付けられたタイトル番号の小さいものから順にお読みすることをお勧めします。

◆情報化社会に暮らす私たち

現在、私たちはかつてないほどの膨大な情報に囲まれて暮らしています。総務省の調査ではインターネット環境が社会に広く普及する前の1996年に対し、その10年後、ネット環境が普及した2006年では人がアクセスできる情報量が530倍ほどになったと報告されています。またアメリカの市場調査会社、IDC(International Data Corporation)は2020年の世界のデータ総量は2000年のそれに対し9500倍ほどになったと報告しており、いずれの調査結果も私たちの暮らす世界が物凄い勢いで情報化していることを示しています。また、この傾向は今後も続くと予想されます。

このような情報化社会において私たちは世界のあらゆる場所と瞬時につながり、以前は入手困難であったかなり専門的な情報もネットを通じて容易に入手できるようになりました。また、膨大な情報により生み出された様々なサービスや商品によって私たちの生活の利便性は大きく向上しました。

◆私たちの抱える渇き

では、以前に比べ数千倍もの情報が得られるようになり、利便性が向上した世界で暮らす私たちはかつての人々に比べどれくらい幸せになったでしょうか。すると、決して現在の私たちの幸福度は以前の人々に比べそれほど上がっていないと気づくのではないでしょうか。私たちを幸せにしてくれると信じていた利便性は決して幸福とはイコールではないのです。むしろ世界は以前にも増して混沌としており人々の心には消し去りがたい不安が広がっています。

世界各国における不安症に関する調査で一生のうちで全般性不安障害を抱える人の割合が最も高かったのは高所得国で、その割合は5%と、低所得国の1・6%の3倍ほどであったことが「JAMA精神医学」誌(2017年)に掲載され報じられています。これは経済的な豊かさや利便性が不安の解消に繋がっていないことを示しています。

湖に浮かぶボートに乗っている私たちは皮肉なことに渇きを覚えています。周りにはこれだけ豊かな情報という水があるにもかかわらず、それによって渇きを癒すことができないのです。情報はそれだけでは私たちを潤し癒すものにはなりません。情報はそのまま私たちの抱える問題の解決には繋がらないのです。

◆問題の根源的な原因を理解する。

ではどうしたらよいのでしょうか。私たちのこの渇きを癒してくれるものとは一体何でしょうか。私たちの抱える痛みを喜びに変え、不安を平安に変えてくれるものは何でしょうか。

これから伝える内容はまさにその何かについて答えようとするものです。問題の根源となっている何か、そして成果や幸福の源になっている何かについてこれから話していきたいと思います。

今、社会や組織で行われている問題解決の取組の多くは現象への対処であり、問題の根源的な原因を捉えて、そこに対処することはできていません。確かにそれらの対処療法は一時的に問題の発生を抑えたり、問題の解消につながるかもしれません。しかし恒久的に問題を解決することはできません。日々報じられているニュースを見るとき、それらニュースはこれまでも繰り返し報じられてきたような事件ばかりです。人や場所こそ変わっていても、報じられている出来事は以前のものとさほど変わっていないのです。このように同じような事件が繰り返し起きているのは、人や社会が問題の根源的な原因を理解しておらず、その原因に十分対処できていないためです。

もちろん問題の根源的な原因を理解したら、すぐに問題が解決するわけではありません。その原因を理解しても問題の解決までには更なる工程を進まなくてはいけません。しかし、問題の根源的な原因が分からなければ、正しい問題解決策など見出すことはできません。解決などおぼつかないのです。